令和4年奈良県母性衛生学会学術集会発表
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今回アンケートでは464名の子育て世代の方にご回答いただきました。その中で443名(95.5%)の方が「相談相手がいる」との回答でした。ほとんどの方が相談相手がいるという結果でしたが、コロナ禍では「子育ての相談相手が激減している」ことや、「相談相手の量や質」が子育て不安に関連していることなどが先行研究で明らかとなっているため、サポートの状況や子育て支援、子育て中の気持ちなど様々得られたアンケート結果を、今回「子育ての相談相手の有無別」に焦点を当てて分析することとしました。
子育てをサポートしてくれる人の内訳では、「夫」「実母」が大多数を占め、次いで「義母」「実夫」「兄弟」「友人」の順となりました。これらを相談相手の有無別でみると、「相談相手がいる」人の方が、家族など身近な人から育児サポートを有意に受けていました。子育て情報の入手先では、相談相手の有無に関係なく、「インターネット」が最も多く選ばれ、全体の8割以上の方が利用していました。これらを相談相手の有無別でみると、「相談相手がいる」人の方が、「家族」や「友人」から子育て情報を有意に得ている結果となりました。「相談相手がいない」人はインターネットからの情報入手が9割を超え、友人・家族に次いで、助産師より保健師から情報を多く得ている結果でした。コロナ禍で感じるストレスや、子育て中の不安についても聞いたところ、「相談相手がいる人」の方が「家族が長い時間家にいること」や、「気軽に相談できる方法がない」ことに有意にストレスや不安を感じていました。希望する子育て支援の形態については、全体の半数以上の人が、SNSによる子育て情報の発信と、対面式のイベント参加を希望していました。助産師に期待することの自由記載では、長期的な関わりの希望、気軽に相談できる窓口や方法を増やしてほしい等、母親にとって身近な存在であってほしいとの要望が多数ありました。
これら分析結果より、相談相手がいない人は、インターネットからの情報収集が中心で、身近な人からの支援が非常に希薄であることから、より多様な支援が必要と考えられます。また、相談相手がいない人は情報の入手先として、助産師よりも保健師の方が多く、自由記載の中でも子育て支援センターなどの行政サービスの利用が多かったことから、助産師とつながる手段が少ないのではないかと考えられます。そして相談相手がいる人の方が、「長時間家族が家にいる」ことや、「気軽に相談できる方法がない」ことに、ストレスや不安をより感じていることが今回明らかとなりました。先行研究より、コロナ禍では、子育て中の母親のストレスが平時よりも大きくなっていることが分かっています。また、相談相手がいても、相談先が限られていたり、感染対策などの医学的な知識が必要な相談内容へと変化するなどして、家族だけでは解決できない内容となった結果、満足度の高い相談ができず、不安を感じているのではないかと推測されます。母親の相談相手の有無に関する情報だけでは、サポートの満足度が高いと簡単に考えることは難しいという結果でした。子育て支援の形態について、全体の半数以上が、SNSによる子育て情報の発信とともに、対面式のイベント参加も希望していることから、非対面で簡単に情報を得ることだけでなく、対面で、直接コミュニケーションをとりながらの支援のニーズも高いことがわかりました。
これら明らかとなった結果から次の課題を得ました。「支援について、サポート・相談相手の有無だけでは評価不可なので、情報収集は多面的に実施していく」「SNSを利用した積極的な情報発信・相談窓口の開設とともに、助産師と容易に繋がることができる手段を作成する」「対面での相談やイベント開催について取り組む」「継続した母子支援のために地域とのさらなる連携をとる」。当会では研究結果を活かし、助産師が中心となって母子支援に関わっていけるように、今後も活動していきたいと考えています。
子育て支援係アンケート研究メンバー:岸智子、竹野亜由美、西村さやか、前田美絵、見谷省子