妊娠・産後の Q&A

妊娠期 Q&A


 【妊娠前や妊娠中とくに食事で気を付けることはありますか? 】

 

 食事の基本はバランスよく食べること、食中毒などの基本をおさえて適量を摂取することが大切です。とくに妊娠の前から避けたいもの、量に気を付けるもの、積極的に摂取したいものなど知っておく必要があります。そして加熱・手洗いなど食中毒予防の基本をおさえて、同じものを食べ続けたりせず、いろいろなものをバランスよく適量食べていれば、食事による大きな問題は起こらないと言われています。正しく知り、知識を身につけて、これからお母さんになる人や妊娠中の人、その周りの人も一緒に考え、支えながら、健康な食生活を送りましょう。

 

 ↓内閣府食品安全委員会よりリーフレット(令和5年3月9日一部修正)

 

体重増加はどれくらいがいいのですか 】

 

妊娠中の適切な体重増加は、お母さんの健康と出産への体づくり、健やかな赤ちゃんの成長に重要となります。体重が増えすぎると、妊娠高血圧症候群・妊娠糖尿病、難産のリスクが高くなります。しかし極端な体重制限をすると早産、低出生体重児、赤ちゃんが将来生活習慣病になりやすいなどのリスクもあり、とくに 現在若い女性の「やせ傾向」から、低出生体重児の増加が問題になっています。2019年に厚生労働省が行った国民健康・栄養調査では、20歳代女性では20.7%、30歳代では16.4%、40歳代では12.9%が「やせ(低体重)」となっています。 妊娠・出産を考える年代にやせている人が多いことがわかります。

2021年3月に厚生労働省より妊娠中の体重管理の目安などが改定となりました。妊娠前の体格は人それぞれなので、まずは自分の体格を知り、妊娠期には推奨されている体重管理を目標にしましょう。

 

BMI=妊娠前の体重(kg)÷身長×身長(m) 

低体重(BMI18.5未満)…12~15kg 

普通体重(BMI18.5~25.0未満)…10~13kg 

肥満(1度)(BMI25.0~30未満)…7~10㎏

肥満(2度以上)(BMI30 以上)...個別対応(上限5kgまでが目安)

 

となります。1週間当たり300~500gの増加を目指しましょう。適正体重はあくまで妊娠期全体を通して適正とされる体重の指標です。短期間で急激に増加したり、ダイエットをして食事制限をしたりすることがないよう、体重の増やし方にも十分注意しましょう。ただ、体重増加がストレスになりすぎないよう、具体的な体重管理については産院の助産師ともよく話をして妊娠中の生活を楽しんでください。 また、妊娠を希望する女性は、妊娠する前から食生活を見直しておくことが大切です。

※毎日体重を測ることから始めましょう。菓子パンをご飯へ、間食のお菓子を果物へ、お腹いっぱい食べることをちょこちょこ食べへ、洋食中心を和食へなど、できることからやってみましょう。また、温かい汁物を積極的に取り入れることで、満腹感を得たり、野菜も摂取しやすくなります。

 

妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針(厚生労働省 令和3年3月)

 

【先天梅毒ってなんですか?

 

梅毒に感染している女性が妊娠したり、妊娠している女性が梅毒に感染すると、胎盤を通して赤ちゃん(胎児)にも感染し、死産や早産になったり、産まれた赤ちゃんに神経や骨の異常が起こることもあります。これを先天梅毒と言います。産まれてすぐに症状がなくても、その後遅れて症状が出たりすることもあります。妊娠の早い段階で分かれば、すぐに治療することができるため、妊娠が分かったら必ず妊婦健診を受けましょう。

 

梅毒の感染が拡がっています(厚生労働省 令和6年度作成)

 

 

【先天性風疹症候群がこわいのですが…】

 

妊娠中に風疹に罹患すると、先天性の心疾患や難聴、白内障などの赤ちゃんが生まれてくる可能性が高くなります。なので、妊娠初期の検査項目に風疹の抗体検査も含まれます。一般にHI法で8倍未満の場合は、風疹の免疫を保有していないため、出産後に風疹ワクチンの接種が推奨されます。32倍以上の場合は風疹の感染予防に十分な免疫を保有していると考えられます。 奈良県では、妊娠を希望する女性の配偶者、初めての妊娠を希望している女性の風疹抗体検査を無料で実施しています。

 風しん抗体検査について/奈良県公式ホームページ (pref.nara.jp)

また、一部の市町村では風疹ワクチンの助成も実施しているところもありますので、お住まいの市町村でご確認ください。 

 

サイトメガロウイルスの抗体検査で陰性(抗体がない)と言われました。どんなことに気を付ければいいですか

 

サイトメガロウイルスは世界中のいたるところにいる、ありふれたウイルスです。多くの人がすでに感染し免疫をもっています。健康であれば感染しても全く問題はないのですが、妊婦が初めて感染した場合や、妊婦の免疫力がひどく低下した場合は流産・死産、赤ちゃんに脳障害や聴覚障害が起きることがあります。 石鹸・流水での手洗いを徹底する、子供と同じフォークやスプーンを使わない、妊娠中の性行為の際はコンドームを使用する…などに注意しましょう。 

※第2子以降を妊娠中に上の子のお世話で、食事のサポートをしたり、おむつ替えをすることは日常的によくある行為ですが、上の子の食べ残しを食べることや唾液や尿のついた手で目や鼻をこすったりして接触感染すると、感染のリスクが高まると言われています。

 

 

ペットを飼っています。何か注意することはありますか 】

 

ペットが媒介する感染症の問題や、ペットの抜け毛などから赤ちゃんにアレルギーが起きないかなどの心配があります。ペットや室内を清潔に保つことが必要です。また、猫の糞や生肉に寄生するトキソプラズマに妊娠中に初感染す

ると流産・死産、赤ちゃんに脳障害・目の障害が起きることがあります。猫用トイレは毎日掃除をし、飼い猫は外に出さない、妊娠中に新たな猫を飼い始めない、ペットに触れた後は手洗いを徹底する、人の顔や口を舐めさせないなど

のしつけも徹底しましょう。 

 

「おなかの張り」がよくわかりません… 】

 

おなかの張りには流産や早産などのリスクが高まる危険な張りと、起こっても問題のない生理的な張りがあります。 

生理的な張りは、子宮が大きくなる時に起こる自然な現象です。また胎動によって子宮の筋肉が緊張して張りを感じることもあります。どちらも一時的なもので、休めば治まるのが特徴です。 

危険な張りの目安としては、妊娠29週以前では1時間に3回以上の張り・妊娠30週以降では1時間に5回以上の張りがある、出血がある、しばらく休んでも治まらない、持続的な痛みがある…などです。どれか一つでも当てはまるときはなるべく早く産院に連絡しましょう。 

※普段から自分のお腹にたくさん触れてみてください。張りのない子宮はおなかもやわらかく、形もまるく、ふわふわしています。よく張っているときは、お腹も触ると硬くなっていたり、形も変形していたり、ひんやり冷たかったりします。お腹に普段から触れて状態を知っておくことは、何かあった時にすぐ相談できる大事なポイントになります。


産後Q&A <赤ちゃん>

よくおっぱいやミルクを吐きます。大丈夫でしょうか?

 

この時期の赤ちゃんの胃は、大人とは形が違っていておっぱいやミルクなどをまだ吐きやすい形をしています。ゲップが上手く出来なくて、吐いてしまう事も多いでしょう。機嫌がよく、体重も増加しているなら心配いりません。ただし、飲むたびに吐く・機嫌が悪い・体重が増える様子が無い、などの症状がある場合は、胃の入り口が狭くなっていて胃におっぱいやミルクが入らない状態なのかもしれません。健診を待たずに小児科を受診しましょう。

生まれて1カ月頃から顔に湿疹が出てきました。病気でしょうか?

 

生まれて1~2か月頃の赤ちゃんはホルモンの状態が急激に変化し、赤くてポツポツとしたニキビのようなできものや、毛の生えている部分にかさぶたのようなものができる脂漏性湿疹などがよく見られるようになります。

 多くの場合は石鹸でしっかり洗った後、よく洗い流し、保湿をすることで治まっていきます。ただし、湿疹が広がってひどくなる一方だったり、皮膚が赤く薄皮がむけてくる場合は、お近くの小児科や皮膚科を受診しましょう。

乳幼児突然死症候群(SIDS)が心配です。どんな事に気を付けたらいいですか?

 

乳幼児突然死症候群(SIDS)は、それまで元気だった赤ちゃんが、事故や窒息ではなく眠っている間に突然死亡してしまう病気です。日本での発症頻度はおよそ出生6,000~7,000人に1人と推定され、生後2ヵ月から6ヵ月に多いとされています。SIDSの原因はまだわかっていませんが、育児環境のなかにSIDSの発生率を高める3つの因子があることが、これまでの研究で明らかになってきています。

 

①1歳になるまではあおむけ寝で育てましょう

うつぶせに寝かせたときの方が、あおむけ寝の場合に比べてSIDSの発症率が高いということがわかっています。うつぶせ寝がSIDSを引き起こすものではありませんが、医学上の理由でうつぶせ寝をすすめられている場合以外は、赤ちゃんの顔が見えるあおむけに寝かせるようにしましょう。また、なるべく赤ちゃんを一人にしないことや、寝かせ方に対する配慮をすることは、窒息や誤飲、けがなどの事故を未然に防ぐことになります。

 

②たばこはやめましょう

たばこは、SIDS発生の大きな危険因子です。両親が喫煙する場合、両親が喫煙しない場合の約4倍以上も発症率が高いという研究結果もあります。妊娠自身の喫煙はもちろんのこと、妊娠や赤ちゃんのそばでの喫煙もよくありません。これには身近な人の理解も大切ですので、日頃から喫煙者に協力を求めましょう。

 

③できるだけ母乳で育てましょう

母乳で育てられている赤ちゃんは、人工栄養の赤ちゃんと比較してSIDSが起こりにくいと考えられています。母乳による育児が赤ちゃんにとって最適であることは良く知られています。人工乳がSIDSを引き起こすものではありませんが、できるだけ母乳育児をすすめましょう。

(厚生労働省「乳幼児突然死(SIDS)をなくすために」より抜粋)

乳幼児突然死症候群(SIDS)診断ガイドライン(第2版)


産後Q&A <母乳育児>

多くのお母さんが母乳で子育てをしたいと考えています。そこで母乳育児を続けるちょっとしたコツや疑問にお答えしたいと思います。

 

まず産後直後、おっぱいは「好きな時に好きなだけ」あげましょう。おっぱいを赤ちゃんに吸われると、その刺激が脳に伝わり、母乳の分泌がどんどん進みます。頻回に授乳することで母乳育児がよりやりやすくなります。

 

分娩後1週間くらいすると、赤ちゃんの吸い方がしっかりしてくるので、母乳の分泌もよくなってきます。「あんまり出ていないかも・・・」と思っても、何度も乳首を吸われることで、母乳を出すホルモンがどんどん分泌されるようになります。母乳での育児をお考えなら、この時期は少し粘ってみましょう。もし、母乳不足かどうかが不安な時は、健診のときに助産師や医師に相談しましょう。

 

【母乳育児を続けるコツ】

 

・母乳は赤ちゃんが欲しがるときに欲しがるだけあげてOKです!

・分泌を良くするためには、栄養と休息を十分に取りましょう。焦らずマイペースにいきましょう。

・上半身の血流をよくするため、肩から肩甲骨にかけてのストレッチやマッサージも効果的です。

 

おっぱいがよく出るためは何を食べたらいいですか?

 

何が「良い」・「悪い」という特定の食品はありません。大切なのはバランスです。「主食」「主菜」「副菜」「牛乳乳製品」「果物」の各グループの食品をバランスよく、妊娠前より350キロカロリー程度多めになるように食べましょう。

 

【授乳中、控えたほうがいいものはありますか】

 

妊娠中同様、お酒とタバコは控えましょう。カフェインの過剰摂取も、母乳に移行するので、赤ちゃんが眠れなくなるなど、注意が必要です。

 

【1日に10回以上授乳しています。授乳間隔が短いようなのですが…】

 

 

母乳は消化が良く、2時間程度で消化されるといわれています。一方育児用ミルクは3~4時間かかるため、母乳の場合は授乳間隔が短くなる傾向があります。間隔にこだわらず、母乳は欲しがるだけ与えて大丈夫です。2~3カ月たち、1回に飲む量が増えてくると回数は落ち着いてきます。

 


産後Q&A <ママの体>

【産後1か月が経ちました。悪露が一時出なくなったのですが、また出血し始めました。生理でしょうか?】

 

一旦悪露が出なくなったのであれば、生理が始まっている可能性があります。授乳をしていても産後1か月以降は排卵している可能性もあります。

赤ちゃんのお世話でママはなかなか自分の体のことは後回しになりがちですが、以下のようなことがある場合には、一度産婦人科を受診するようにしてください。

また、1か月健診は必ず受診しましょう。

 

〈注意が必要な症状〉

出血が続く・粘り気があり赤黒く臭いの強い悪露がいつまでも続く・腹痛がある・会陰切開の縫合部の腫れ、痛みが続く・発熱・頭痛・トイレが近い・排尿時の痛み、残尿感がある

 

 

【1週間前に出産しました。 主人が仕事から帰ってくるとついイライラしたり、家にいると何もないのに涙がこぼれたりします。 精神的に不安定で、自分でも病気ではないか、不安です。 】

 

出産後はホルモンの状態が急激に変化しているため、誰でも精神的に不安定になりやすい時期です。 自分で自覚できるくらい症状がある場合は「マタニティブルーズ」かもしれません。 これは産後1週間くらいまでの間に数日間続き、涙もろさ・不安感・焦り・頭痛・気分の変調などの症状があります。 すべての産後のママの2~3割に現れるといわれており、一時的なものなので次第に消えていきます。

ただし、症状が2週間以上続いてつらい場合は産後うつの可能性もあるので、1人で悩まず、ご家族や住んでいる市町村の相談窓口に相談することをお勧めします。育児の支援や心身のケアなど、産後のママをサポートできる「産後ケア」など、利用できるものがあるのでぜひ問い合わせてみてください。